AEDは子供に使うことができるのか?子供にAEDを使う場合、大人とどのように違うのか知っていますか?
結論から言いますと、AEDは子供に対しても使用可能です。意外かもしれませんが、AEDは1歳未満の乳児にも使用する事ができるので、基本的にAEDが使用できない対象となる人はいないと考えてよいでしょう。
AEDを子供に使用する場合、使用するAEDに小児用パッド等がある場合にはそれを用いて電気ショックを行います。もしも小児用バッド等がない場合には、成人用パッドを用いでOKとされています。
子供に対してAEDを使用する事を考えると、様々な疑問が生まれると思います。この記事では、子供に対してAEDを使用する時の使用方法や注意点などをまとめておりますのでご一読下さい。
※こちらの記事はJRC蘇生法ガイドラインを参考に記載しております。
※本記事中の小児用パッドは『エネルギー減衰機能付き小児用パッド』を指します。
AEDの電気ショックは1歳未満の乳児に対しても問題なし
何らかの原因で心臓が痙攣し、血液を流すポンプ機能が失われた状態(心室細動)になると、人はすぐに意識を失い倒れてしまいます。
その心室細動を正常な状態に戻す唯一の方法が、AEDによる電気ショックです。
医療ドラマのなどでAEDなどによる電気ショックを行い、電気ショック後に大人の体が大きく浮き上がるシーンを見たことある人もいるのではないでしょうか?
(実際にAEDを使うと、状況にもよりますが胸部から体が持ち上がるような衝撃はあります)
そんな電気ショックを子供に行ってよいのか?
不安に思われる方もいますが、子供にも、1歳未満の乳児に対してもAEDは使用することができます。
子供にAEDを使用する場合、使用するAEDに小児用モードや小児用キー、あるいは小児用パッドがある場合には、それを用いて電気ショックを行います。
しかしすべてのAEDに小児用モードや小児用パッドが付いているとは限りません。
対象者が子供であったのに、急いで持ってきたAEDに小児用パッドがなかったら、、、
そんな時も大丈夫です。
小児用モードや小児用パッドがない場合には、成人用パッドで電気ショックを行っても問題はありません。
それでは成人用パッドと小児用パッドでは何が変わるのでしょうか?
次の章で解説致します。
大人と子供にAEDを使用する際の違い
大人と子供にAEDを使用する際の違い
子供にAEDを使用する時に、成人に使用する時と違う点は、下記の2つです。
①体が小さく成人と同じように右鎖骨下と左わき腹にパッドを貼ることができないため、胸と背中パッドを貼り付けます。
②子供にAEDを使用する場合、使用するAEDに使用するAEDに小児用モードや小児用キー、あるいは小児用パッドがある場合には、それを用いて電気ショックを行います。
小児用パッドを使用すると変わる2つの変更ポイント
AEDの小児用パッドや、小児用モード、小児キーなどを使うと、AEDが以下のように変わります。
ポイント① 電気ショックのエネルギー量が落ちる
ポイント② 音声ガイダンスの通りスムーズにパッドが貼れる
詳細を各項目ごとに説明致します。
ポイント① 電気ショックのエネルギーが落ちる
ガイドラインでは、小児の電気ショックのエネルギー量は、初回もそれ以降も統一して 4J/kgが提案されています。
簡単に言うと、子供に対してAEDを使用する場合は、通常よりも電気ショックのエネルギーを少なくするという事が提案されています。
一般の人が使うAEDには、電気ショックのエネルギー量を調節する機能はありません。
小児用パッドや小児用モード、小児キーを使う事で、エネルギー量が自動的に約1/3まで下がります。
ポイント② 音声ガイダンスの通りスムーズにパッドが貼れる
子供にAEDのパッドを成人と同じように右の鎖骨下、左のわき腹に貼ろうとすると、小さい体ではパッドが重なってしまい上手く貼れない可能性があります。
ではどうすればよいのか?
実は子供にAEDを使う場合は胸と背中にAEDのパッドを貼ります。
そのため小児用パッドには、胸と背中でパッドを貼る絵が描いてあります。
AEDの音声ガイダンスは『パッドを絵の通り貼ります』と流れます。
もしも胸と背中で貼ることを知らなかった場合、パッドが上手く貼れずに慌ててしまうと思いますが、小児用パッドを使用していれば、スムーズに胸と背中に貼ることができるのです。
AEDを子供に使わなければいけない場面
AEDを子供に使わなければいけない場面とはどんな時なのでしょうか?
それは呼びかけても反応がなく、呼吸もなくなっている(もしくは普段通りの呼吸をしていない)状態です。
特に『普段通りの呼吸をしていない』というのは、心肺停止直後にときおりみられる、しゃくりあげるような呼吸で『死線期呼吸』という状態があります。この場合はただちにAEDを用いた心肺蘇生が必要です。
普段の生活でAEDを使用する場面にはなかなか遭遇しません。
本当にAEDを使用する必要があるのかどうか、冷静な判断はとても難しいかと思いますが、
すべてのAEDは心電図を自動で解析し、本当に電気ショックが必要であるのかどうか、判断をする機能を持っています。
本当はAEDが必要なかった人に、間違えてAEDで電気ショックをしてしまった!
ということは起こりませんので、心配は不要です。
むしろ、『本当はAEDが必要であった人に対して、AEDを使わなかった』
という事にならないよう心配をして行動することが大事です。
AEDを使う場合、未就学児(およそ6歳)までが子供
未就学児(およそ6歳) | AEDを使用する場合は、子供用(小児用モード/キーあるいはエネルギー減衰機能付き小児用パッド) を用いる。 小児用パッドがない場合、成人用パッドを用いる。 |
小学生 | AEDを使用する場合は大人と同様に成人用パッドを用いる (小児用パッドを使わないよう要注意!) |
中高生 | 大人と同様(成人用パッド) |
AEDを子供に使用する場合、そもそも子供というのは何歳までになるのでしょうか?
ガイドラインでは、小児用モード/キーあるいはエネルギー減衰機能付き小児用パッド
の使用年齢の区切りを、未就学児(およそ 6 歳)と規定されています。
つまり、AEDを使用する時に『子供』として対応する必要があるのは、
小学校入学前の子供です。
小学生に対してAEDを使う場合は、大人に使用する場合と使い方はまったく変わりません。
小児用パッドを使用する際の注意点とよくある質問
小児用パッドはエネルギー量が落ちますので、成人には使用できません。
ガイドラインにも、『成人に対して小児用パッドを用いてはならない。』と明記されています。
パッドを付け変えずに、スイッチで小児用モードなどへ切り替えるタイプのAEDは特に注意が必要です。
小児用パッドに関連したよくある質問をまとめて回答致します。
■Q.保育園・幼稚園なので、初めから小児用パッドを付けておく事は可能でしょうか?
A.機種にもよりますが、小児用パッドを待機状態から接続しておく事ができる機種はあります。しかし、そのような使用方法は推奨できません。
小児用パッドを初めから接続して管理しているAEDは、『未就学児にしか使用できないAED』となってしまいます。
もともとAEDは小児用パッドがなくても、未就学児に対しても使用できるものです。
『大人に使う場合はパッドを成人用パッドに交換する』という運用方法で、理論上は使用が可能ですが、万が一大人に対してパッドの交換を忘れてそのまま使用してしまった場合は大変です。
■Q2.子供にAEDを使用した時、パッドを貼っている途中で小児用パッドの存在に気がついた時には、成人用パッドを剥がして小児用パッドに付け替えたほうが良いですか?
A.これについては筆者の私感になりますが、小児用パッドの付け替えは行わずにそのまま成人用パッドを胸と背中に貼って、1秒でも早く電気ショックを行った方が良いのではないかと思います。
理由としては、AEDが必要になる場面では胸骨圧迫や人工呼吸、AEDによる電気ショックが遅れることによるメリットはなにもないからです。
また、ガイドラインでも『小児用パッドがない場合には、成人用パッドで代用する』とされているため、未就学児に対して成人用パッドを使用する事はもともと可能であることから筆者としてはそのように考えています。
まとめ
AEDを子供に使用する時には小児用パッドを用いますが、小児用パッドがない場合は成人用パッドで代用ができます。
小児用パッドにあまり拘り過ぎて、AEDの使用が遅れる事がないようにご注意ください。
また、AEDだけでなく人工呼吸や胸骨圧迫の心肺蘇生法もとても大切です。
AEDの使用方法や心肺蘇生が学べるAED講習会にも是非参加をおすすめいたします。
AED講習会情報はこちら
子供のAED以外にも『ペースメーカー使用者にAEDは使えるのか?』という質問も多く聞きます。
ペースメーカー使用者へAEDを使用する場合の注意点などはこちらの記事で詳しく解説しております。是非ご覧ください。
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